
歴史は繰り返す。だが、繰り返されるたび、意味合いは少しずつ変わっていく。
昨年、爆発的な人気となったトイカメラでも同じ現象が起きている。ちなみにトイカメラとはロシアや中国などで生産された「おもちゃのような」作りのカメラを言う。工業製品として見たときの性能は、日本やドイツのそれには遠く及ばない。だがプラスチックのレンズなどによる独特の仕上がりが一部ファンに支持され、1990年代には一躍ヒットアイテムとなった。だが一部の好事家を除いて、その後ブームは下火になっていった。
1990年代のヒットが「物珍しさ」によるものだとすれば、2008年のトイカメラブームはデジタルへのアンチテーゼだった。撮影前から液晶で仕上がりが予想でき、誰もがきちんとした写真を撮ることができる。最近ではセンサーで人間の顔を感知し、笑顔の瞬間を狙って自動的にシャッターを切るデジタルカメラすら登場した。確かにラクではあるが、市販のデジカメから、「撮る快感」は失われていった。それが故、トイカメラのような手触りを求める人を中心にまったく逆のブームが巻き起こったのだ。
だが、フィルムカメラを取り巻く環境は厳しい。トイカメラでも使われるカートリッジタイプの110フィルムは2010年9月に富士フイルムの出荷予定分を最後に、その歴史に終止符を打つことが決定している。
だが、カメラにはまだ愉しみが残されている。そう思える"デジタルトイカメラ"が2009年に続々と登場した。その代表格が今年3月に発売された「デジタルハリネズミ」。画素数は7~8年前のデジカメレベルの200万画素しかなく、液晶を使ってのプレビュー機能もない。液晶自体はあるものの、撮影するまで仕上がりはわからず、撮影者は曖昧な撮影範囲を示すファインダーを頼りにシャッターを切ることになる。つまり、仕上がりを見るまで、どんな画が撮影できたのかわからない、あのワクワク感がこのカメラにはあるのだ。
"トイデジカメ"だけあって、動画の撮影も可能だが、初代は音の収録機能は盛り込まず、デジタルでありながら8ミリカメラのような世界観が演出されていた。静止画のプレビュー機能も、動画に音を付加することも、現代ではさして難しい技術ではない。だが、「デジタルハリネズミ」は、敢えてそうした機能に背を向けた。機能に何を足すかではなく、いまある機能から何を引くか、そんなソリッドな魅力にこのトイデジカメはあふれている。
ある数学者は、「最初から"解"がわかっている問題に、数学者は何の魅力も感じない」といった。老舗の和食店の料理人は「その日の水揚げがわからないからこそ、市場に行くとワクワクする」という。
本日11月12日からは、機能を向上させた「デジタルハリネズミ2」が渋谷パルコ1ロゴスギャラリーで先行発売される。ただしその変化は、画素数を200万→300万画素と微妙に向上させ、音声付きの動画撮影が可能になったという程度。初代の「ビビッドな色合い」や「デフォルメされた画面」は健在であり、パルコでのイベントにはこの“トイデジ”の熱烈なファンである米映画監督のスパイク・ジョーンズや写真家のティム・バーバーなどの作品も展示される。
撮ってドキドキし、見てワクワクする。写真が本来持っていた魅力がそこにはあるはずだ。
『デジタルハリネズミ2/パワーショベル』
"トイデジ"の魅力満載の「デジタルハリネズミ」の2代目。MoMAなど海外のミュージアムショップで取り扱われるなど、爆発的な人気を博した初代に続く2代目となる。今日12日から24日まで、渋谷パルコ・ロゴスギャラリーにて発売記念イベント「DIGITAL HARINEZUMI 2 YOU!」が開催。アーティストの作品展のみならず、レアな限定モデルなども販売されるという。イベントの入場は無料。"デジハリ2"の価格は1万5750円。
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